環境漫才への招待

食の安全性、廃家電横流し事件考

(牛丼挽歌と鳥インフルエンザ― 食の安全性を考える)

H教授― 食の安全性か、考えてみると結構この問題は根が深いんだ。

H教授― 環境省はほとんど関係してないけど、広い意味ではそうだろうね。安井至先生はそのHP(http://www.yasuienv.net/ )で、環境問題を一四の類型に分けておられるけど(「環境問題の変質」1―6)、そのひとつにBSE問題が挙がっているくらいだから。

H教授― H教授―(1)水俣型公害問題(2)交通公害型問題(3)POPs型問題(4)日の出町型最終処分地問題(5)豊島型不法投棄問題(6)ダイオキシン問題(7)リサイクル問題(8)温暖化問題 (9)持続可能先進国型問題(10)持続可能途上国型問題 (11)RoHS型問題(12)CSR・EPR問題(13)BSE型問題(14)その他の問題に分けて、原因、加害者、被害者、対処法を述べておられる。自然保護とか生物多様性の話は入ってないけど、必読だね。

H教授― リスクをどう考えるかということだよね。われわれは絶えざるリスクに晒されている。例えばいまこうして話している5分後にわれわれの頭上に隕石が落ちてくる可能性だってまったく皆無とはいえない。

H教授― そう、絶無とはいえないけど、ほぼ皆無なリスクは無視というのが現実的には正しい選択だと思うよ。 でも交通事故の死者は年間一万人くらいいる。となるとそのリスクはものすごく大きい。だから社会的にも、個人的にもできるだけリスクを低減させるよう努めなければならない。 こういうおっきなものから無視できるものまで、さまざまなリスクにどう対応しようというかの問題だ。

H教授― お、キミも進歩したねえ。

H教授― そうか、えらいえらい。それからベネフィットが伴うリスクかどうか、そのベネフィットを受ける者とリスクを甘受しなければいけない者が同じかどうかでもおおきく変わってくる。 過剰死亡率や平均余命で比較する健康へのリスクだけでなく、生態系へのリスクというのも考えなくちゃいけない。環境問題を論じるには、こういうリスク学をきちんとやらなきゃダメなんだ。

H教授― うるさいねえ、キミは。いまはBSEとか鳥インフルエンザの話だろう。

H教授― そのまえにBSEの基本だけ抑えておこう。キミ、どこまで知ってる?

H教授― ばか、プリオンだろう、異常プリオン。

H教授― 学者のなかにはただのたんぱく質が感染させるはずがない、絶対病原体生物がいるはずだと考えている人もいまだにいるみたいだしね。はい、つづけて。

H教授― つまり一見健康そうな牛でもヒトでも感染していて潜伏期間中ということがあるわけだ。

H教授― うるさい、はい次。

H教授― ま、そんなところかな。大体、牛はもともと草食動物なんだから、牛骨粉なんて食べさせるべきじゃないんだ。家畜糞尿や死骸をただ燃やすのはもったいないから、有効利用は考えるべきだと思うけどね。 ところでヒツジにも同じような病気があって、スクレーピーというんだ。BSEの起源だという説もないわけじゃないけど、ふつうはヒトや他の動物へは感染することはないみたいだ。またBSEは、豚や鶏なんかには感染しないみたいだ。CJDはヒト社会では昔からごく稀にあるし、食人習慣のあった頃のニュ―ギニアなんかでは伝染性があって、クールー病てよばれてたけれど、これもCJDの一種だね。また、CJDに罹った人の脳の硬膜を移植して罹る場合もあって、これは裁判沙汰になっている。

H教授― そう、そこが一番の問題だ。なにも対策を講じなければ、牛がBSEに感染、発病する率は決して低くない。安井先生の孫引きだけど、イギリスでは一八万頭がBSEを発病、四百万頭が感染・発病を疑われて殺処分されているそうだ。 牛骨粉を餌にすることを禁止し、BSEを発病した牛を殺処分するだけでも、BSE感染牛は相当減るみたいで、イギリス以外のヨ― ロッパではBSE発病牛は二千頭台にとどまっている。 また、危険部位をきちんと除去していれば、ヒトがvCJDに罹患する率はきわめて小さいんだ。全世界でイギリスを筆頭に今まで二百人にも達していない。 肉骨粉を禁止したり、輸入制限をしても、BSEは潜伏期間が長いから、日本でも先日一一頭目が発病が確認されたけど、こんごとも数十数百はまだ出現するかもしれないし、ひょっとして発病前のBSE感染牛の牛肉をすでに食べた人もいるかもしれないけど、いずれにせよヒトがそれで感染・発病する確率はきわめて低い。ましてや、危険部位をきちんと除去して食べれば、数年にひとりも出ないんじゃないかなんて話を聞いた。

H教授― 交通事故で死ぬひとは年間一万人だよ。去年は随分減ったそうだけど、やはり四捨五入すれば一万人だ。生涯リスクでいえば、二百人にひとりは交通事故で死ぬんだ。 いわゆる発ガン物質なんかは、絶対安全という濃度はないとされている。でも発ガン物質の環境基準を決めるとき、VSD(実質安全量)という考え方があって、統計的に生涯リスクで十万人にひとり、或いは百万人にひとりぐらいガン死者が増えるくらいのラインだったら、実質的に安全とみなしてVSDにしようというのが、世界の大勢になっていて、ベンゼンなんかもこういう考え方で環境基準が決った。 いずれにせよ、リスクの大きさだけからいうと、BSEに関しては段違いに神経質だねえ。

H教授― 関係ないだろう!! 現時点では輸入再開は反対だよ。だって、米国の言い分はもっともらしいけど、一方じゃBSEを理由に日本の牛肉の輸入を禁止しているじゃないか。完全なダブルスタンダ― ドだもん、こちらを直すのが先決だね。 でもねえ、海外に毎年百六、七十万人渡航して、日本で輸入を禁止している牛肉を外国で日本人がぱくぱく食ってるのには、なんにも言わない、今回の米国の牛肉だって、輸入済みのものは「最後の牛丼」になったんだけど、これだってリスクはおんなじはずだから、なんにも規制措置をとらなかったのは、おかしいといえばおかしいよね。

H教授― 費用対効果っていうのがあって、或る程度のリスク削減までは投資効果が高い。でもそっから先は莫大な費用をかけてもなかなかリスクは削減しにくくなるんだ。 交通法規や信号や歩道がなければ、交通事故の死者は年間十万人にはなるだろう。それをこういう対策をとることで一万人ぐらいに納まっているけど、これから何百兆円かけても百人とか千人にはならないと思うよ。 BSEでいうと規制強化や検査体制の強化はもちろん必要だけど、全頭検査まではいくら安心料とはいえやりすぎじゃないかなあ。経験の長いヨーロッパ並でいいと思うし、各国共通ラインの規制で足並みを揃えて輸入再開してもいいと思うよ。 あと、牧場、農協からレストランまでの牛の履歴の完全表示義務を課すべきだと思うなあ。まあ、牛だけじゃないけど。 それより、現在の対策でのリスクをわかりやすくきちんと公表すること、宝くじで一等あたる確率とくらべてどうとかね。また、個人ベースでのリスク削減法を知らせるとともに、われわれ自身がそういう知識をもつべきだよね。

H教授― 法の網を潜り抜ける輩は何億円という罰金や重罰を課せばいい。不幸にしてvCJDに罹ったひとがでてきたときは ―将来とも罹るひとがいるかどうか疑問だけど― 症状からすぐわかるんだから、国家が損害賠償じゃなく、相当額の見舞金を出すシステムをつくるべきだと思うよ。

H教授― うーん、多分渡り鳥経由かなんかで入ってきたんだろうなあ。養鶏場はたいへんだし、最大限の予防対策を講じなきゃならないだろうなあ。死者に鞭打つのはなんだけど、やっぱりあの養鶏場の初期対応はひどかったねえ。 ただ、鶏肉や鶏卵経由でヒトに感染した例は知られていないから、われわれ消費者はそれほど気にすることはない。もちろんカラスの死骸に触れたり、鶏と接触することは避けたほうがいいけど。

H教授― まず、食の安全性ということでいえば、百%の安全性なんてないということを知っておく必要がある。農薬とかだけじゃなくて、外からはわからない病原菌のいる動植物だっているかもしれない。行政はせいぜい九九パ― セントの安全性しか保証できないんだ。毎年少なくとも数十人は毒キノコを食べて死んでいる。自分の舌と鼻をもっと訓練させるんだな。それと一番健康に影響があるのは、偏食や暴飲暴食だということを知っておいたほうがいい。

H教授― うるさい、食の安全性に神経質になりすぎるのが、いちばんよくないんだ。ま、行政の対応として重要なのは、市場にでる食物には生産地、生育地、肥飼料農薬等の完全表示義務を課すことじゃないかな。あとは或る程度以上は自己責任、不測のときのために保険というものがある。

H教授― そう、とくにすきやきのとき最初に入れる白い脂の塊。 あれが煮詰まってとろっとした奴なんてのは、最高だねえ。生きている価値があると思っちゃうよ。

H教授― ほっといてくれ!

H教授― やっぱり食べ物はできるだけ自国産で賄うほうがいいんじゃないかな。食料自給率がカロリ―ベ―スで40%というのは異常だと思うよ。できれば地域内で産して、農薬や化学肥料をあまり使っていないもの。

H教授― いや安全性は関係ない。多分心理的な安心性だね。

H教授― キミ知らないか、人間は自己矛盾を犯す動物ならざる動物だってことを。

H教授― ほうらひっかかった。一見引用風だけどオリジナル(笑)。

(廃家電横流しは悪か?)

H教授― (ニヤニヤして)キミ三つのRって知ってるかい。

H教授― そう、で、その優先順位は?

H教授― そう、リサイクルに回されたものをリサイクルせずにリユ―スしたんじゃないか。法律違反かも知れないけど、いいことじゃないか。それにこの事件の被害者はだれなんだ。

H教授― 販売店が預かり金としていて、返すことになったじゃないか。

H教授― 販売店は知らなかったみたいだから、請け負った運送業者が運送費だけでなく、売れるものは売ろうと思ったんだろう。リサイクル費用の詐取まで考えていたかどうかわからないし、かりにそうだとしても消費者はリサイクルするつもりでリサイクル費用を払ったんだ。それが社会的にもっと有効なリユ― スに回ったんだから、いいじゃないか。

H教授― そうじゃなくて、法律の矛盾、欠陥がでてきたんだと思うよ。まえにリサイクルの推進がかえってリユ― スを妨げていることがあるって言ったけど、これが典型的な事例だと思うよ。

H教授― 消費者がまだ使えるけど、機能がちょっと物足りなくなったとか、修理すれば使えるけど、この際だから買い替えて・・・と思ったわけだ。

H教授― まあ、安易にそう思うこと自体が問題だとは思うけど、それをリユ―スするにはどうすればいい?

H教授― 貰ってくれるひとがいればいいけど、いない場合は?

H教授― 売れればね。でも新しいものならいざしらず、使って何年もした電化製品なんてふつう買ってくれない。 市町村では粗大ごみで出されたものを再生して市民に販売したりしているところもあるけど、電化製品だけはPL法ってものがあって、やってなかったんだけど、それでも、千円とか千五百円ぐらいで引き取って処理してくれた。しかし家電リサイクル法制定以降は該当四品目は引き取りもしなくなった。 つまりフリーマーケットなんかを別にすれば、社会的にリユースする道がないんだ。そして家電販売店で処理料プラス運搬費で五千円から一万円くらい出して引き取ってもらうしかなくなった。だから不法投棄が増えた。

H教授― その場合消費者は千円とか千五百円払うんだから有価じゃないよね。つまり廃棄物処理ということになる。その業者は一般廃棄物処理業の許可をとらなきゃいけないんだけど、通常はこういう場合許可はでないそうだ。そもそも法律がこういう場合を想定していないんだから。

H教授― この事件はそういう閉塞状況を破ったんだから、再発防止云々より、リユ―スの道を開くべきだと思うよ。

H教授― 販売店で引き取るとき一律の料金じゃなくて、ABCとランク分けするとか。

H教授― そのメンドウなことをやって横流しして利益を得ていたんだもん、できないわけないじゃないか。或いは今回のようなことを公然とやれるルートを認知するとか。

H教授― 別に武器じゃないからいいじゃないか。ただ、冷媒にフロンを使ってるようなものは、廃棄時にフロンの抜き取り処理をしそうにないから除外したほうがいいかな。

H教授― ああ、これもダイオキシンの余波だね。

H教授― は、ダイオキシン?

H教授― そう、ダイオキシンの規制強化で、産廃の焼却炉が新基準をクリアできず、廃炉が続出しているらしいんだ。だからだよ。 ― センセイはどう思われるんですか。

H教授― まあ、このことだけ取り上げればやむをえないと思うけど、ダイオキシンが過剰規制になってないかよく調査することが必要だと思うよ。ま、とはいっても、ダイオキシンの規制緩和は世論が許さないだろうな。 それよりも、まえに言ったかと思うけど、廃棄物の定義を有価かどうかだけでなく、循環資源かどうかの観点も含めて抜本的な見直しをしなければいけないと思うよ。実際、現場では産廃と事業系一廃、事業系一廃と家庭系一廃の区分も混乱してるし、特別管理一般廃棄物なんてのは名前と概念があるだけで、現場ではほとんど無意味だって話も聞くしねえ。

H教授― さあなあ。でも有価か否かよりも、循環資源か否かに着目し、それによって対応を根本から変えること、拡大生産者原則を基本にすること、事業者からの廃棄物は特殊な場合を除き、裾切りをしたうえで、つまり従業員のいない住居事業者一体型のもの以外はすべて事業者責任にすること、また、家庭ごみも排出量に応じて有料にすることなどの基本原則は出せそうな気がするけどなあ。 つまり、企業にしても家庭にしてもごみを出さないほうが得をするし、そうしたニ―ズを満たす長寿命製品や長期間保証製品をつくる企業が潤うような社会システムにしなくちゃいけないんだ。たとえばレンタル社会とかね。

H教授― それもあるけど、もっと大事なのは有限の資源を大事にするってことだ。「もったいない」という感覚を取り戻さなきゃいけない。もったいないは英語ではうまく訳せないそうだ、つまり欧米、とくに米国ではそういう感覚自体がないんだよね。「下取り」とか「量り売り」なんてのは、うまくできた日本独自の制度だと思うけどね。

H教授― そうだな、生態系というか生物多様性の話に関しては二つばっかり新しい動きがあった。

(カルタヘナ議定書と遺伝子組替)

H教授― いや、そっちは知らない。ひとつはカルタヘナ議定書が発効し、それに伴い正式名称を遺伝子組替生物のなんちゃらたら言う「カルタヘナ法」が先日施行された。

H教授― うん、生物多様性条約に基く議定書で、遺伝子組替生物の環境影響を防止するための国際的な取り決めだ。そしてそれを担保する国内法がカルタヘナ法。

H教授― 遺伝子の突然変異は自然界では日常茶飯事だ。ある意味では子どもが生まれること自体、広義の遺伝子組み替えといえないことはない。 生物ってのはこうした無数の遺伝子の組み合わせのバリュエ―ションのなかから自然選択で生きのびてきたものなんだ。最適生存原理だよね。 だから、人為的な遺伝子組替生物を自然界に放てばモンスタ―どころか、ほとんどがたちまち滅んでしまうだろうと言われている。 そういう意味では、それほど怖がることはないのかも知れないけど、万一ってことがあるから、それへの対応について共通のル―ルを定めることにしたんだ。

H教授― そりゃ、そうだよ。収量増加や害虫に強い生物を作り出すとかメリットも大きいからね。 ま、でも立花隆のように遺伝子組み替え万万歳とは思わないし、慎重であるべきだとは思うよ。 人間に害はなかったけど、風が吹けば桶屋が儲かる式の、予想外の生物への悪影響がでたという例も知られているしね。

(エイリアンをめぐって)

H教授― 外来生物種についての法律を国会に出している。

H教授― 帰化植物がそうだし、移入種とかいわれているものもそうだね。アメリカザリガニだとかタイワンドジョウだとか。こうしたものを英語で言えばエイリアンというんだ。

H教授― はは、ま、そりゃそうだ。でも何百年とか何千年経って定着しているものはいまさらどうしようもないじゃないか。 それにこれからだって人間の生活に役立つものはどんどん移入することになるかも知れない。 この法律は、人間に被害を与えたり、生態系を混乱させるものに関しては移入を原則禁止したり、すでに移入されているものは駆除したりしようとするものだ。それから人間に被害を与えたり生態系を撹乱させる恐れがあるかもしれないものについても一定の規制を加えようというものだ。

H教授― うん、ニホンザルとの雑種ができ、生態系が撹乱されるから、駆除しようとしているものだね。 でも雑種ができ子孫が残せるということは、種は同じと言うことだ。黒人と白人と黄色人種みたいなもんだ。ブル― ギルだとかセイタカアワダチソウのように種の異なるものが、土着種を滅ぼすという話とは違うよね。 生態学者は極端な純血主義で、例えばホタルにしても岩魚にしても河川ごとに特徴があるから、ちがう川に放流するべきじゃないという。

H教授― キミ、国際結婚はどう思う?

H教授― ばか、だれがキミの妄想を話せといった。同じ種であっても撹乱しちゃいけないという生態学者の意見はまちがってるとまでは言わないけど、そういう議論が人種の混血はいけないんじゃないかなんてところに結びつかないか心配だ。 もちろん、生態学者は自然とそうなるのはいいけれど、人為的にそうしちゃいけないという話だと反論するだろうけど。でもタイワンザルの話なんて、論理構造からすればアフリカから連れてきた黒人を雑種が出来て生態系を撹乱するから殺せと言ってるのと同じじゃないかな。

(VOC規制導入!)

H教授― うん、あと四本ある。 ひとつは海洋汚染防止法の改正で、国際条約に対応して、いままで一定程度認められてきたし尿など廃棄物の海洋投棄をより厳しく制限しようとするもの。 それから大気汚染防止法の改正で、これは固定発生源からのVOC(揮発性有機化合物)の濃度規制を導入しようというものだ。

H教授― まさか。

H教授― 規制の中身だけど、マトモな企業ならとっくに対応している程度の規制だと思うよ。法規制されてないから、なにしてもいいんだ的な考えの企業には厳しい規制と思われるかもしれないけど。とりあえず法の網をかぶせることに意義があるんだということなんだろうな。 それに屋外での塗装という大きな発生源というか発生態様は規制できないみたいだしね。もちろん公共事業での低VOC塗料の率先使用だとか、エコマ―ク、JISとの連動とか、いろいろ考えてはいるみたいだけど。 あとねえ、この法改正ではVOCについて、規制は最小限にして産業界の自主管理に期待するみたいなことを法律で明言しているのは珍しいね。うまくこのプレッシャ―が効を奏せばいいけどね。

H教授― 廃棄物処理法も改正される。岩手・青森県境の産廃不法投棄問題と硫酸ピッチ問題がきっかけで、前者に関しては、県をまたぐような不法投棄に環境省が関与できるようにしたこと、後者に関しては、産廃の不法投棄だけでなく、その準備行為というか未遂行為も処罰されるとしたものだ。

(環境配慮促進法案上程)

H教授― あるよ、いわゆる環境配慮促進法というのができそうだ。

H教授― 環境報告書って知ってる?

H教授― この法案は環境報告書推進法案といっていいかもしれないな。 環境報告書はいろんな企業で作りだしたけど、手前味噌みたいなのも散見されるから、その仕様を揃えようとするとともに、一部上場企業だけでいえば、まだ一割弱しか作ってないみたいだから、これをもっと普及させることを意図したんだろうな。 特殊法人などの公的企業には一定仕様の環境報告書とその第三者チエックを義務付け、その他の大企業にも環境報告書作成の努力義務を課そうというもんだ。

H教授― うん、新法つくりや法改正は役人の勲章だからな。 でも、それで環境がどれだけよくなるのか、わからないようなのが多いような気がするね。

H教授― はは、それがわかってれば、キミとの環境漫才なんてやってないよ。

(ブッシュ再選は可能か)

H教授― まだ50%もいるほうが信じられないよ。それにウルトラCがあるかもしれない。

H教授― 大統領選直前にビンラデインの捕捉なんてやればまた人気は盛り返すかもしれない。

H教授― いまは泳がせているだけかもしれないじゃないか。

H教授― ビンラデインを捕らえても第二第三のビンラデインが現れてくるだけだけど、とりあえず再選だけはできるだろう。

H教授― そんなことはないよ。最悪のことを想定しておくと、それより少しだけマシな事態があらわれれば、それだけで幸せじゃないか。

H教授― つまり、キミみたいな学生の相手をすることを不幸と思わずに、このあとどんな学生が来ても今よりも幸せになれるって希望が持てれば人生楽しいじゃないか。

(二〇〇四年二月二二日)
参考:H教授の環境行政時評第一四講(EICネット、平成一六年三月)同第一五講(同四月― 予定)